美術解剖学とは
美術の分野において美術解剖学というものがありますが、解剖と聞くとどうしても医学の解剖を思い浮かべてしまう人も多いのではないでしょうか。
授業で行われる美術解剖学というのは、医学の解剖に近しくなっています。
医学の解剖といえば、病気やケガの治療をするという点において役立つ知識を身につけることを目的としています。
それに対して美術解剖学の場合は、絵や彫刻といった美術の創作活動に役立てるために身体の仕組みを勉強していくためのものです。
人の身体というのは、表面だけ見ても分からない部分が多くあります。
人の骨や筋肉といった身体をつくる要素は表面だけでは分からない分、解剖学で補っていくことがより深く美術を理解するためには大切なものです。
美術と解剖の関りは深い
過去に芸術家の中に名をはせた人は幾人も居ますが、ミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチの名前は多くの人が知っているでしょう。
そんな誰しもが知っているほど有名な芸術家も解剖の経験があったのです。
レオナルド・ダ・ヴィンチに関しては30体以上の解剖をしていたという話もあるほどです。
17世紀から19世紀のヨーロッパのアカデミーにおいて美術解剖学は必修に近い科目であり、以前から美術解剖学は美術の分野に重要な影響を与えています。
日本でも明治維新以降から美術解剖学の講座が開かれるようになり、現代まで美術を勉強する人たちに学ばれています。
古代と解剖
美術解剖学と呼ばれることがなかった古代ギリシアや古代エジプトの時代であっても、時に卓越した人体表現がされていたことがありました。
美術解剖学という名前はついておらずとも、昔から解剖が芸術に影響を与えていました。
古代エジプトの時代といえば、王など位の高い人は死後ミイラにするという文化がありました。
ミイラにするためには腐るのを防ぐために内蔵を取り出すなどの処置をしなければいけません。
日常的に解剖に近しいことが行われていたことも芸術に影響を与えていると考えられます。
身体の中身を知っているのとそうでないのとではリアルさが大きくことなります。
鑑賞にも役立つ
美術解剖学は、美術品を作る時にだけ役立つ知識ではありません。
例えば、美術品を作る側ではなく見る側であっても知っているとまた違った見え方ができるようになります。
美術解剖学を勉強することによって、人体の主要な部位をおさえることができるようになると、見えない骨の存在まで感じられるようになります。
美術をより深く楽しむ上では知っておいて損はない知識です。
美術解剖学を少しでも学んでおけば、美術品の隠された魅力に気づいたり作った人の意識している点など作品を通しての対話も楽しめるようになるでしょう。